- アンドリュー・ラングへの窓 - https://www.andrewlangessays.com -

このサイトについて

のサイトでは、忘れられた巨人・ラングについて紹介します。今ではアンドリュー・ラング(アンドルー・ラング)(Andrew Lang: 1844~1912)について知っている人はそう多くないと思いますが、ヴィクトリア朝時代(1837~1901)の究極の文人とも言われています。スコットランド生まれで、ロンドンで活躍したラングと日本との接点という視点からも、わかる限り紹介したいと思います。

 たとえば、1885年に北斎漫画を紹介し、鳥山石燕とりやませきえん(1712?1788)の「画図がず百鬼ひゃっき夜行やこう」などから日本の妖怪も紹介しています。また、日本のおとぎ話を彼の有名な『色の童話集』(1889~1910)で紹介しています。このシリーズは1958~1959年に川端康成校閲で『ラング世界童話全集』として翻訳されました。ラング自身も創作フェアリー・テールを出版し、Prince Prigio(1889)は日本語にも訳されています。

 一方、南方熊楠(1867〜1941)がロンドンに到着してすぐに、ラングに会いに行けとすすめられたのは、ラングから民俗学や人類学について教えを乞うためだったようです。夏目漱石もロンドン到着後にラングの『夢と幽霊』(1897)に遭遇し、強い印象を受けて、帰国後に書いた短編小説「琴のそら音」(1905)でラングに言及しています。『文学論』(1907)でもラング訳の『ホメロスのイリアス』(1883)を参照しています。

 このように、ラングの分野は幅広く、書籍として出版されたものは編集や序なども含めて300点とされます。彼の主要作品はプロジェクト・グーテンベルクなどから読むことができます。しかし、5,000に及ぶと言われる雑誌や新聞掲載の評論を読むことは難しいのが現状です。これらすべての収集出版はイギリスでもなし得ていないようです。ラング没後100周年の2012年に、スコットランドの新聞『スコッツマン』に「アンドリュー・ラング—多作な才能の人生と時代—」と題して、文芸評論家のスチュアート・ケリーがラングの再評価を訴えていますが、ケリーもラングの評論すべてを収集するのは難しいだろうと言っています。

 ラングは1870年代後半に文芸評論家としてデビューするなり、人気評論家になり、23種類ほどの新聞・雑誌に書いていたようですが、中でも有名なのは『ロングマンズ・マガジン』(Longman’s Magazine)のコラム(1886~1905)と、『ロングマンズ・マガジン』が休刊してから、『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』(The Illustrated London News)にコラムを持ったことです。後者は亡くなるまで続きました。この両方とも、ほぼ収集できたので、その中から面白いものをご紹介したいと思います。そして、一人でも多くの方に知っていただき、研究しようという方が増えればいいなと思っています。また、間接的でもラングと現代日本と結びつく点があれば、紹介したいと思っています。

牟田 おりえ

牟田おりえ略歴

 長年オーストラリアの大学(西オーストラリア大学、クインーズランド大学など)で教育・研究に携わりました。その後、岐阜大学に移り、ラングの研究はその頃に始まりました。以下の学会発表(オーストラリアのアジア研究学会)は岐阜大学時代のものです。

 福島第一原発事故で放射能問題の深刻さに心を痛め、早期退職して放射能問題に集中的に取り組みましたが、リタイア後のライフワークにしようと思っていたラング研究も同時に再開しなければと思って、サイトを立ち上げた次第です。

学歴:MA, PhD(シドニー大学)

ラング関係の論文

2005年:単著「フェアリー・テイルと人類学の接点」、桂宥子他(編)『英米児童文学の黄金時代』所収、ミネルヴァ書房

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2004年:単著「夏目漱石とアンドリュー・ラング」、オーストラリアのアジア研究学会第15回隔年学会プロシーディングス
“Natsume Soseki and Andrew Lang: their interpretations of the supernatural”, Robert Cribb (ed.), Asia Examined: Proceedings of the 15th Biennial Conference of the ASAA, 2004, Canberra, Australia
http://pandora.nla.gov.au/pan/124461/20110211-1446/coombs.anu.edu.au/SpecialProj/ASAA/biennial-conference/2004/Muta-O-ASAA2004.pdf

最近の翻訳・論文

2014年:翻訳 アリソン・ロザモンド・カッツ「チェルノブイリの健康被害—ニューヨーク科学アカデミーが核関連組織のえせ科学に対する解毒剤を出版—」、
日本科学者会議(編)『国際原子力ムラーその形成の歴史と実態—』合同出版

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2013年:共著論文 Helen Kilpatrick and Orie Muta “Deconstructions of the (Japanese) Nation-State in Uehashi Nahoko’s Moribito (Guardian) Series” , C. Kelen & B. Sundmark (eds), The Nation in Children’s Literature: Nations of Childhood, Routledge, pp.81-95.