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英米に伝えられた攘夷の日本(6-4-3)

1857年の英米メディアには、中国に対する戦争を煽る記事と、アメリカの参戦拒否に関する記事が掲載されます。

The Late Engagement with Chinese Junks in Fatsham Creek
(佛山水道で中国ジャンクとの最近の戦闘)

左よりWar Junks, Mounting Twelve to Fourteen Guns(戦争ジャンク、12-14の銃を装備)、
Snake Boats(スネーク・ボート)、A Small Creek—Sampans(サンパン船)、Mandarin Town of Toung Konan(役人町)、Fort(砦)、Point Dividing the Creeks(支流の分岐点)
出典:『イラストレイテッド ・ロンドン・ニュース』1857年8月29日(注1)

フランス他ヨーロッパ列強の参戦

『ニューヨーク・デイリー・タイムズ』掲載のイギリス・メディア記事の紹介です。

1857年5月2日: 第2面「中国皇帝から引き出すべき譲歩/中国の防衛準備/合衆国が対中国同盟への参加拒否」(『ロンドン・スタンダード』パリ特派員より、(注2)

「ポルトガルが中国に遠征隊」(『ロンドン・タイムズ』のパリ特派員より, p.2)

アメリカの参戦拒否

「合衆国と中国におけるイギリスの紛争」(『マンチェスター・ガーディアン』より, p.2)

中国の防衛準備

「中国の防衛準備」(Moniteur de la Flotte[パリの雑誌]より, p.2)

戦争を煽るイギリス・メディア

1857年5月16日:第1面「中国戦争/暴動と虐殺/合衆国と中国/イギリスの中国攻撃」

「イギリスの中国攻撃」(Paris Paysより):第2面

「ロンドン・タイムズ」より, p.2

訳者コメント: 最後の文章は意味不明ですが、深読みすれば、イギリスが戦争を仕掛けて占領しなければ、中国は自滅するとでもいうのでしょうか。アメリカ人読者がこの記事を読んでいる頃、下田でハリスが日本人について、「奸智と狡猾と虚偽」「あらゆる詐欺、瞞着、虚言、そして暴力さえもが、彼らの目には正当なのである」(1857年5月14日、(注3))と日記に書いていたことを思い出します。

参戦拒否のアメリカを批判するイギリス・メディア

「中国との戦争における合衆国の態度」(『ロンドン・ポスト』より, p.2)

1857年5月22日:第1面「英仏使節が中国へ」 第2面「ロシアと日本が重要な条約」

 条文全部が掲載されています。

餌食に群がるワシの群れという比喩

1857年5月29日:第2面「中国と戦う偉大な十字軍:戦争とその目標」

(『ロンドン・タイムズ』5月14日より)

 題名の「十字軍」の意味が最初のパラグラフで明らかにされます。フランスだけでなく、スペイン・オーストリア・イタリアも中国に向けて戦艦を送るという内容です。重要点を抄訳します。

訳者コメント:これほど露骨な「文明国家」と「人間性」の定義を聞かされた挙句に、アジアの「半野蛮国」を欧米列強が大挙して攻撃する目的はただの好奇心からだと開き直られて、1世紀半後の私たちは唖然とするばかりですが、本音がどこにあるかを、数日後の新聞に掲載された香港とカントンのアメリカ貿易会社からの訴えが語っています。

1 The Illustrated London News, Vol.31, 1857 July-Dec., p.212.
米国大学図書館協同デジタルアーカイブ、ハーティトラスト・デジタル・ライブラリー
https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=uc1.c0000066803
2 The New York Daily Times, May 2, 1857,
https://timesmachine.nytimes.com/timesmachine/1857/05/02/issue.html
3 坂田精一訳『ハリス 日本滞在記(中)』、岩波文庫(1954)1997、p.250.