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2026-04-19

『もっと暗い日々』2-5-4

自衛隊の若者たちをトランプの違法な戦争に差し出すつもりだった高市首相

 日本初の女性首相・高市早苗氏が就任(2025年10月21日)前日に日本維新の会としたことが憲法9条の改正、つまり、「戦争放棄」を掲げた世界唯一の平和憲法9条を削除して、自衛隊を軍隊にするという表明でした。「自由民主党・日本維新の会 連立政権合意書」(2025年10月20日、(注1))に明記されています。

 高市氏がいかに好戦的かは、就任早々、2025年11月7日の衆議院予算委員会で「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と発言したことで十二分にわかります。台湾海峡に日本は軍隊を出し、中国と交戦するという趣旨の発言と受け取られても当然です。しかも、現在は存在しない「戦艦」という言葉を連発し、「宇宙戦艦さなえの世界」に浸りきっている高市氏の発言によって「誤解が誤解を呼び、戦争への坂道を転げ落ちる」(注2)という警告も出ました。日本に何度も侵略され、国内を戦場にされた中国が激怒し、様々な制裁を課してきて、日本の産業界が迷惑を被っているのに、発言の撤回も事態打開のための謝罪もしない女性首相を国民は圧倒的に支持しました。

 2026年2月8日には、「大義なき解散」と批判された衆議院解散総選挙で圧勝しましたが、その3日前にトランプ米大統領が維新との連立政権が掲げるもの(9条削除を含めた軍国化政策)について「完全かつ全面的な支持を表明する」(注3)と自分のSNSに投稿し、日本国内では内政干渉だと批判されました(注4)。そのお礼メッセージに、高市氏は「私たちの同盟の潜在力は無限大です」(注5)と書き、氏のX上の英訳は”The potential of our Alliance is LIMITLESS”と大文字で強調しています。

 日本国民の税金は無限大に際限なくトランプ様に差し上げますと読めてしまいます。自民圧勝に対する国民へのお礼は述べず、トランプに述べたことが象徴的で、大きな違和感を持った国民には《高市これだけ圧勝したのに支えてくれた党員や有権者より先に内政干渉してきたアメリカ大統領に感謝してるのキツすぎる》(注6)と声をあげた人もいたそうです。

 BBCは「高市首相、衆院選で圧勝 しかし経済回復は実現できるのか」(2026年2月10日、(注7))と題した記事を「完全にどちらか一方だけを選ぶ余裕は日本にはない」と断定して締めくくっています。日本政府自身が2024年時点で、「日本にとり中国は最大の貿易相手国;日系企業の海外拠点数で中国は第1位」(注8)などと表明しているのに、高市氏の中国を挑発する言動で、中国を仮想敵国として大丈夫なのかという指摘でしょう。2026年2月14日に、ミュンヘン安全保障会議で中国の王毅外相が2025年11月の国会における高市氏の発言について「中国の国家主権への挑戦であり、14億の中国国民は決して同意しない」と批判したと報道されています(注9)

 トランプ政権とアメリカ軍にとっては、アメリカ隷属の高市首相が最高だという意見表明が投票日の2日前に香港の英字新聞『アジア・タイムス』に掲載されました。元駐日米国大使館米海兵隊武官グラント・ニューシャム(Grant Newsham: 1956-)による「高市:アメリカが待ち望んでいた日本の首相」(注10)という見出しの記事で、高市首相は「中国に立ち向かう度胸があり、本当の意味で防衛力を強化する首相をアメリカは長いこと待ち望んでいた」と述べています。その読者コメントが鋭く次のように指摘しています。「高市がアメリカの国益を守るという意味で最良の首相だという点でグラントは正しい。しかし、自国の国益よりも、他国の国益を優先するリーダーはいいリーダーとは言えない」。

 高市氏が好戦的でアメリカの国益を優先するリーダーだという証拠が雑誌『選択』(2026年4月号)の記事「高市が『退陣』を口にした夜」で明らかにされました。「高市は、実は米国大統領ドナルド・トランプの要請に応じ、ホルムズ海峡へ自衛隊を派遣する腹積もりでいた。これに今井[尚哉たかや:1958-; 内閣官房参与]は『国難だ』と怒り、首相執務室へ乗り込むと、高市と激論になった。その剣幕は“恫喝”に近かったという。『あんた、何考えているんだ。どうなるか分かっているだろうな!』」。それでも「自衛隊派遣に執着する高市に」自民党政調会長・小林鷹之(1974-)や、「そのときは内閣が飛びます」と高市を諭した首相政務秘書官・飯田祐二(1963-)らのおかげで、自衛隊をトランプの違法な戦争に参戦させることは免れたのだと、国民は内部告発的な記事で知らされました(注11)。でも、権力におもねる大手メディアが取り上げることもなく、国民の高市支持は上昇し、日本経済新聞社とテレビ東京の3月27-29日の世論調査結果は72%、日米首脳会談の結果を評価するが65%でした(注12)

日本をアメリカの違法な戦争から守った憲法9条

 高市氏の暴走を政権内で抑えた結果、高市氏はトランプとの会談で、日本には憲法上の制約があるから、できることと、できないことがあると表明したようです。トランプはNATO加盟国のほか、「日本、韓国、オーストラリア」がアメリカのイラン攻撃を支援していないと4月6日に非難しました(注13)。高市氏と自民・維新の極右の政治家たちが自衛隊を軍隊にして、戦争したいと熱望していることは、憲法9条を破棄して日本を軍国化するための「改憲」を、巨大与党になった現在「数の力」で「押し切る構え」を、4月9日の衆院憲法審議会で見せたと報道されました(注14)。4月10日に公表された自民党の新ビジョンには、憲法改正が自民党の「死活的使命」、つまり、戦争=大量殺人ができる国にすることに自民党と維新の会が命をかけると表明したのです。

「平和憲法は日本の宝」とコールする若者たち

 自民・維新の政治家たちが大量殺人者にさせたいという日本の若者たちが立ち上がり、反戦デモを始めて、「平和憲法日本の宝」と訴えているのは救いです。3月25日頃から日本全国で始まった反戦デモの特徴の一つは、若い女性たちが中心となっていること、コールの言葉に若者たちの気持ちが表れていることです。たとえば、2026年4月8日に国会前で行われた「平和憲法を守るための緊急アクション#」(注15)でのコールを拾うと以下のようなものがあります。1時間半ほどなので、コールの時間的位置を記します。

平和憲法日本の宝
戦争反対9条守れ
平和を守れ
自由を守れ
武力で平和は作れない
誰も戦争に行かせない(1時間20分頃)
焼け野原より花畑
みんなが平和に暮らせるために、アメリカ言いなりもうやめて
基地もミサイルももういらない
改憲反対平和を守れ
改憲反対過去に学べ
武器の輸出は憲法違反
高市総理は憲法守れ
自民も維新も憲法触るな
権力者側が憲法いじるな
This is people power/This is democracy

 国会前のこの抗議集会には3万人が集まり、7万人が同時配信のライブ視聴したということで、合計10万人の参加者がいたそうです。印象的だったのは、若い女性たちが日本国憲法前文、9条、13条、99条を暗唱したり、読み上げて、参加者と共有したことです。彼女たちが何を強調したかったのか、この箇所(45分〜50分)をご覧ください。改めて、引用します。

憲法9条 日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため陸空海軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない(参加者に頷きながら唱和)。

13条「すべて国民は個人として尊重される。生命、自由、及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする。 99条 天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官、その他の公務員はこの憲法を尊重し、擁護する義務を負う。

 最後のコール(1時間20分頃から)で9条を繰り返したのも効果的でした。「戦争と武力は放棄する/これを永久に放棄する/9条こそが日本の防衛/9条こそが最高の防衛/憲法こそが日本の防衛/憲法こそが最高の防衛/改憲はんたーい、高市総理は聞いてるかーい、自民も維新も憲法さわるなー、主権者は私たちだ、憲法を絶対に変えさせない」。

 また、このコールで「コール&レスポンス形式」が採用され、10年前の安保法制反対デモの若者グループシールズ(SEALDs)の「民主主義ってなんだ」に参加者が「これだ」とレスポンスすべきところを「なんだ」(注16)と繰り返していたのと比べると、今回は”I say 憲法, you say 守れ“/I say 改憲, you say 反対”と指示し、参加者たちが「守れ」「反対」とレスポンスしていたのが印象的でした(1時間28分)。

「外交さぼるな高市早苗」とコールする平和フェスの女性

 この抗議集会の10日ほど前に「3/28(土)新宿的東南口広場平和フェス」という抗議集会が行われ、1200人以上が参加しました。若い平和教育研究家の女性が呼びかけ、見ず知らずの賛同者がスタッフとして手伝っていると会場で紹介されました。主要部分は「No Hate TV」(注17)に掲載されたので、ここでのコールも紹介します。

 最も話題になったのは、「中国ごめん」というコールで、4日前の3月24日に現職の自衛官が刃物を持って中国大使館に侵入した事件に対し、高市政権が中国に謝罪もせず、責任を取るべき役職の者たちの処分もしない状態に対して、国民として「中国ごめん、代わりに謝る」とコールしたのです。「国会もメディアもなぜか口が重い」中、鳩山由紀夫元首相は「刃物を持って侵入した以上、中国大使を殺(あや)める覚悟で国境侵犯をしたと思われても当然」と警鐘を鳴らしました(注18)。1930年代の関東軍の暴走から始まる日中戦争を思い出します。政府も防衛省も外務省も外交をせずに、隣国を挑発し、戦争を起こしたいと表明しているようで、戦争になれば真っ先に殺し殺される役目を負わされる当事者の若い人々は、無能で危険な政府に代わって、対話外交をし、平和を維持しようという強い思いが伝わるコールです。

外交サボるな高市早苗
平和外交対話が必要
自衛官テロ謝れ、政府(11分30秒頃から)
自衛官テロあやまれ、高市
テロの謝罪真面目にしろよ
テロの責任真面目に取れよ
高市あやまれ/小泉[防衛大臣]あやまれ
代わりに謝る中国ごめん/中国ごめん/中国ごめん/中国ごめんなさーい
民意を聞かない首相はいらない((注19): 2時間8分頃)
高市もう無理/高市早苗に総理はできない
高市早苗は今すぐ辞めろ
お前のせいで人が死ぬ

良心的兵役拒否を申請する米兵が急増

 2月28日にトランプ政権とイスラエルのネタニヤフ政権が違法に始めたイラン攻撃に駆り出されている米軍兵士たちはどう感じているのでしょうか。戦争4週目に突入した時点で、「『イスラエルのために死にたくない』:トランプ大統領のイラン戦略に対する疑問が兵士たちの間で広がる」(2026年3月26日、(注20))と題した記事で紹介されました。

 良心的兵役拒否を申請する兵士が過去に例がないほど増えていること、登録を検討中の兵士の多くが、2月28日にアメリカ軍が行ったイラン南部の小学校の空爆により、女子小学生ら175人が死亡したことが「決定的な転換点」だと表明しているそうです。同日にイランの最高指導者らが長距離ミサイルによって殺害されました。

 この記事によると、2023年以降アメリカが支援しているイスラエルによるガザ侵攻の惨状を「目の当たりにし、米イスラエル合同作戦への参加に懸念を表明している」米兵が増えているそうです。そして、「軍の中核を担う若い世代の米国人は、テルアビブに対してはるかに懐疑的になっている。今月のNBCニュースの世論調査では、34歳未満の有権者の63%がイスラエルを否定的に見ていることが明らかになった(2023年は37%)」と伝えています。

 戦争に行かされる若者たちは、何の罪もないガザの市民・子どもたちが毎日殺害される惨状や、主権国家イランの指導者を殺害し、女子生徒を大勢殺すアメリカ・イスラエル軍に参加したくないと思うのは普通の感じ方でしょう。ところが、日本の改憲派の政治家たちは「普通の国で軍隊の海外派遣は政治判断の問題」(注21)と、イラン戦争を違法に始めたトランプ・ネタニヤフ政権の「政治判断」を認める発言をしています。

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1 「自由民主党・日本維新の会 連立政権合意書」令和七年十月二十日
https://storage2.jimin.jp/pdf/news/information/211626.pdf
2 「佐藤優氏『戦艦という言葉が首相の口から出ること自体、極めて異常』いま高市首相に送りたいアドバイスとは」『東京新聞』2025年11月21日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/450761
3 「トランプ氏、衆院選で『高市氏支持』なぜ異例の表明?」『毎日新聞』2026/2/7 https://mainichi.jp/articles/20260207/k00/00m/030/082000c
4 「(社説)米大統領の支持 許されない内政干渉だ」『朝日新聞DIGITAL』2026年2月7日 https://digital.asahi.com/articles/DA3S16398773.html
5 「高市首相 Xでトランプ氏に謝意『ホワイトハウス訪問を心待ちに』」『毎日新聞』2026/2/9 https://mainichi.jp/articles/20260209/k00/00m/010/042000c
6 「高市首相 トランプ大統領への『お礼投稿』が“内政干渉容認”と波紋…その後ひっそり削除→再投稿で『変化した箇所』」『女性自身』2026/2/10
https://jisin.jp/domestic/2564906/
7 「高市首相、衆院選で圧勝 しかし経済回復は実現できるのか」BBC, 2026年2月10日 https://www.bbc.com/japanese/articles/cvgjwvp47kpo
8 「中国経済概要・日中経済概要」外務省中国・モンゴル第二課、2025年4月
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000007735.pdf
9 「外務省、中国外相の発言に申し入れ、国際会議で高市総理の台湾有事発言めぐり日本を批判」(TBS NEWS DIG)2026/2/15
https://news.yahoo.co.jp/articles/d480b750812869bea870dda2f435530872c98f68
10 Grant Newsham “Takaichi: the Japanese prime minister America has been waiting for”, Asia Times, February 6, 2026
https://asiatimes.com/2026/02/takaichi-the-japanese-prime-minster-america-has-been-waiting-for/
11 この記事は『日刊ゲンダイ』が紹介しています。「高市首相が自衛隊派遣めぐり安倍側近と壮絶バトル→『クビ切り宣言』の恐るべき暴走ぶり“粛清連発”も画策か」2026/04/02
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/386001

また、ネット・メディアのデモクラシー・タイムス「3ジジ法談」でも紹介されました。<高市・トランプの狂乱> 平野貞夫×佐高信×前川喜平【3ジジ放談】20260403(9分25秒頃から)https://www.youtube.com/watch?v=j6_ESehToFA

12 「高市内閣支持率、3ポイント上昇72% 日米首脳会談『評価する』65%」『日本経済新聞』2026年3月29日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA250UE0V20C26A3000000/
13 「トランプ氏、日本など名指しで非難 対イラン軍事作戦で協力せず」ロイター通信、2026年4月7日 
https://jp.reuters.com/world/us/RDAIEGU4RJOZNKJCUT3SQTHAQM-2026-04-06/
14 「憲法改正『死活的』使命 自民が新ビジョン」時事通信、2026年04月10日 https://www.jiji.com/jc/article?k=2026041000953
15 国会議事堂前から生配信!4月8日 平和憲法を守るための緊急アクション #平和憲法を守る0408 https://www.youtube.com/watch?v=9dLcOGWYgqw
16 選挙ステッカーさんのポスト(SEALDsシールズのコール)投稿日:2026.03.20
https://x.com/senkyosticker/status/2034774491189190748

選挙ステッカーさんのコメント:2015年7月10日、国会前でのSEALDs中心の安保法制反対デモの映像です。ドラム隊+コール(「民主主義ってなんだ?」「これだ!」も)、プラカードのデザイン、学者、野党議員らによるスピーチ。怒りと熱。約1ヶ月半後、国会前には10万人もの人が集まったのです。

17 「倉重篤郎のニュース最前線 日中関係はどう修復すべきか 台湾有事発言から自衛隊員の中国大使館侵入事件まで」『毎日新聞』2026/4/11
https://mainichi.jp/sunday/articles/20260406/org/00m/010/012000c
18 「反戦平和運動の歴史」, No Hate TV, Vol.365, 2026/04/02
https://www.youtube.com/watch?v=P0FpW5P1M5k
19 「3/28(土)新宿的東南口広場平和フェス:推しは平和憲法;戦争・独裁ムリすぎ!」
https://www.youtube.com/watch?v=hB9IAfXc-8M
20 Akbar Shahid Ahmed, “’Do Not Want To Die For Israel’: Doubts About Trump’s Iran Strategy Spread Among Troops”, HUFFPOST, Mar 22, 2026
https://www.huffpost.com/entry/trump-troops-iran-war-israel_n_69bf18a1e4b01c6ce885ce6d
21 「自衛隊派遣『憲法9条のおかげで断れた、は戯れ言』維新・馬場前代表」『朝日新聞DIGITAL』2026年4月9日
https://digital.asahi.com/articles/ASV491RZFV49UTFK00FM.html