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2020-03-28

英米に伝えられた攘夷の日本(6-7-3-5)

ユージン・ドゥーマンが証人喚問された上院の「太平洋問題調査会に関する公聴会」(1951)で、証拠として提出された国務省の広報ラジオ放送「我々の日本占領政策」(1945年10月7日)全文が掲載されていますので、紹介します。

ドゥーマンの証言

 上院の公聴会におけるドゥーマンの証言の続きです。Dはドゥーマン、Mは委員会の弁護人モリスの略です。

M: ドゥーマンさん、あなたは1951年7月11日の非公開委員会で証言し、最初にジョン・カーター・ヴィンセント氏とあなたとの間に見解の相違があると以下のように言いました。

 日本のように人口過多で植民地なしに支えられない国は、大陸で入手できる天然資源を日本にも利用できるようにしないと共産化するという非常に深刻な危険性があるというのがその頃の私の考えでした。一方、7000万〜8000万の日本人の生活には、日本の4島の都市部で見つけられるものに制限すべきだというのがヴィンセントの考えでした。
(中略)

訳者コメント:ドゥーマンが「植民地なしに支えられない国」と植民地肯定の発言をしているのに驚きます。戦後日本でも日米開戦しない方が合理的だったと評価されました。ドゥーマンのこの発言がなされた1951(昭和26)年に当時の首相・吉田茂(1878-1967)が過去の日本外交を検証するよう外務省政務局政務課長の齋藤鎮男(1914-1998)に指示したと、『経済学者たちの日米開戦』(2018,(注1), p.158)がその結論を引用しています。

齋藤が同僚とまとめた外務省の文書「日本外交の過誤」(昭和二六年四月一〇日)の最後では対英米開戦の判断について次のような指摘がされている。

かりに、あの際日本が隠忍自重して、戦争に入っていなかったと仮定したら、どうだろうか。戦争を前提とするからこそ、石油も足りない、屑鉄も足りない、ジリ貧だということになる。戦争さえしなければ、生きて行くに不足はなかったはずである。

ラジオ放送された日本占領政策

ドゥーマンの証言の続きです。

D:これらの見解は国務省後援のラジオ放送で発表されました。1945年10月6日の夜、ワシントンD.C.で放送されたと思います。

M:あなたはその放送を聞いたのですか、それともそのトランスクリプション(転記/筆記録)を読んだのですか?

D:新聞でそのトランスクリプションを読みました。

議長:誰がその放送を作ったのですか?

D:このプログラムに参加したのは数人いて、SWINK(State-War-Navy Coordinating Committee国務省・陸海軍調整委員会)の民事部メンバーだったヒルドリング大将(General Hildring)と現在、大統領付海軍武官のデイヴィッドソン大佐です。

M:ドゥーマンさん、今そのトランスクリプションのコピーをお持ちですか?

D:いいえ、持っていません。

M:その放送で何が起こったか覚えていますか?

D:私が非公開委員会で証言したのと同じです。(中略)強調されていたのは、日本が支えられる程度の小規模産業と農業、漁業です。

M:議長、このトランスクリプションは重要と考えられるので、記録に入れてください。
(中略)((注2), p.735)

訳者注:このブルティンが掲載されていますので、主要点を抄訳します。適宜、原文にはない小見出しをつけます。((注2), pp.736-743)

「国務省ブルティン 我々の日本占領政策」1945年10月7日

アナウンサー:
ヒルドリング大将は財閥、日本のビッグ・ビジネスは解体されると言います。「我々は日本が大企業合同を再建することを許さない。日本の民主的グループが軍国主義狂信者たちに攻撃されないよう守ることを約束する」。

 国務省のジョン・カーター・ヴィンセントは国家神道の終末を予測しています。「天皇制は根本的に修正され、日本の民主政党は集会と表現の自由を確約される」。

 海軍のデニソン大将は日本は民間航空を認められないと言います。日本はやがて民主主義を受け入れると予測し、[アメリカ]海軍は将来日本を管理する責任がある(訳者強調)と強調します。

インタビュアー:
ここ数週間、我が国の日本占領政策ほど、新聞・ラジオ・世論がこれほど広く議論しているテーマはありません。この議論は非常に有益な目的に役立っています。数百万のアメリカ人に、7000万人が住む日本における我々の危険で複雑な仕事について気づかせました。我が国の基本的な日本政策に関するホワイトハウスの出版物(1945年9月23日号ブルティン)はこの議論にまつわる多くの混乱を取り除きましたが、同時に多くの疑問も起こりました。我が国の政策はどう適用されるのか。この疑問に答え、我が国の日本政策を解釈してもらうために、この仕事に直接関わっている政府機関、国務省・陸海軍の代表にお越しいただきました。

 ヒルドリング大将、非常に多くの人が最近まで、マッカーサー将軍が日本政策を定める自由を持っていると思っていました。この政策がどう決定されるのかからお話し願います。

ヒルドリング:
私は政策作成ではなく、実行の補助をしているのですが、政策がどう作られるのかご説明します。国務省・陸海軍調整委員会、略してSWINCが基本的に重要な問題について政策を作成し、大統領の承認を得ます。軍事面では、統合参謀本部の見解が慎重に考慮されます。承認された政策の指令が書かれ、統合参謀本部がマッカーサー将軍に伝えます。我が国の日本占領軍の日本における最高司令官として、彼はその指令を実行する責任を負っています。彼はとてもよくやっていると思います。(中略)

マッカーサーと国務省の軋轢

インタビュアー:
ヴィンセントさん、マッカーサー将軍と国務省の間に緊張関係があるのか知りたいのですが。

ヴィンセント:
そのような報道には全く根拠がありません。実のところ、マッカーサー将軍と国務省の間には直接的な関係はありません。マッカーサー将軍が非常に困難な任務を遂行するにあたって、我々の支持と援助を受けていると保証します。

インタビュアー:
マッカーサー将軍が民間アドバイザーを歓迎しないという報道がありますが。

ヴィンセント:
それも事実ではありません。民間の極東専門家がすでにマッカーサー将軍の司令部に派遣され、彼は非常に誠意をもって歓迎しました。我々は目下、日本の経済、財政などの専門家をリクルートしているところです。このような人々をもっと送る予定です。

アメリカ海軍が日本占領に深い関心を持っている

インタビュアー:
デニソン大佐、極東小委員会の海軍代表として、状況を評価する機会があると思いますが、海軍省が日本政策に直接的関心を持ち、意見を言っていると知らない人がたくさんいます。

デニソン:
我々は日本占領に極めて深い関心があります。太平洋で合衆国海軍の200万人と5,000隻が日本の敗戦に大きな役割を果たしたことがこの関心の理由です。日本は我が国から4,500マイルの海を隔てた島国です。日本を支配し続けること(訳者強調)は絶えず海軍の問題です。

インタビュアー:
その支配に海軍は今どんな役割を果たしているのですか。

デニソン:
我々の船は今日日本沿岸をパトロールしており、この任務が占領軍を支援しています。海軍士官と海兵たちは岸でもマッカーサー将軍を検閲(ラジオ・電話・電報)と民生統治という形で支援しています。海軍は太平洋の元日本領の軍政府と琉球諸島を担当しています。

インタビュアー:
それは沖縄も含むのですか?

デニソン:
そうです。

インタビュアー:
それは一般に知られていませんよね。

デニソン:
その通りです。付け加えると、これらの直接的任務以外に、アメリカ海軍は占領軍が撤退した後でもずっと日本を支配することになる(訳者強調)と思います。(p.737)(中略)

いつまで占領するのか?

インタビュアー:
ヒルドリング大将、我が国はいつまで日本を占領しなければならないと思いますか?

ヒルドリング:
(中略)我が国の目的が達成されるのに、どのくらいかかるか全くわかりません。我々は日本に居続けなければなりません(原文強調)。どのくらいの軍隊が必要であろうと、ヴィンセントさんがおっしゃった目的[日本の民主化]を達成するまで。

インタビュアー:
中国・イギリス・ソ連のような連合国はどの程度、占領政策の作成に関わっているのですか?

ヒルドリング:
それは兵士が決めるべき問題ではありません。それは軍が国務省に頼らなければならない高度な政策が関わっていますから、ヴィンセントさんが答えるべきです。
(中略:占領政策の作成機関についての説明、日本兵の武装解除と本土帰還について)

日本の秘密警察について

インタビュアー:
さて、日本軍の中でそれほど目立たない部分ですが、例えば、警察システムがあります。日本の秘密警察はリベラルで反軍国主義の人々を長年迫害してきました。ヴィンセントさん、これはどうするのですか?

ヴィンセント:
この悪質なシステムは廃止されます。上層部だけでなく、制度そのものが廃止されなければなりません。これしか彼らの日本国民に対する威力を破る方法はありません。アメリカのような文民警察にとって代わらなければなりません。

デニソン:
それが警察の仮面を被った軍隊でないよう、確認しなければなりません。

ヒルドリング:
マッカーサー将軍はすでに憲兵隊と特高警察を廃止しました。

天皇と日本政府はマッカーサーに従属する

インタビュアー:
最も鍵となる問題は、我々の占領軍と天皇以下の現日本政府との関係です。

ヴィンセント:
マッカーサー将軍の任務の1つは日本の憲法を変えることです。日本国民に対して責任を持つ政府の成立を邪魔する憲法の条項を除かなければなりません。

インタビュアー:
天皇の地位が責任ある政府の障害になりませんか?

ヴィンセント:
天皇制は日本国民が廃止しようとしないなら、徹底的に修正されなければなりません。

デニソン:
天皇の権限はマッカーサー将軍に任されており、責任ある政府に対する障害となることは認められていません。将軍に送られた指令はこの点をはっきりさせています。(p.738)

インタビュアー:
デニソンさん、その点についての指令の内容を教えてもらえませんか?

デニソン:
その一部を引用することはできます。マッカーサー将軍への指令は以下です。

  1. 天皇の権限と国家を統治する日本政府は連合軍総司令官としてのマッカーサー将軍に従属する。貴官は使命を遂行するにあたって適当とみなされる権限を行使すること。
    我が国と日本の関係は契約ではなく、無条件降伏に基づいている。貴官の権威は最高であるから、その範囲に関して日本側のいかなる質問も受け入れないこと。
  2. 日本支配は日本政府を通して行うことが満足いく結果をもたらす限りにおいて、日本政府を通して行うこと。これは、必要な場合、貴官が直接支配する権利を害するものではない。貴官が発する命令を実施するにあたり、貴官が必要とみなすなら、武力を行使してもよい(訳者強調)。

 この指令に基づいてマッカーサー将軍が動いているのです。

インタビュアー:
はっきりしてますね。

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1. 牧野邦昭『経済学者たちの日米開戦—秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く』、新潮選書、2018.
2. ”Hearings before the Subcommittee to Investigate the Administration of the Internal Security Act and Other Internal Security Laws of the Committee on the Judiciary United States Senate, Eighty-Second Congress, First Session on the Institute of Pacific Relations, Part 3”, United States, 1951. Hathi Trust Digital Library
https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=uc1.a0002243236&view=1up&seq=5