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2019-09-30

英米に伝えられた攘夷の日本(6-6-9)

マカオに集結したペリー艦隊は、日本に行く前に中国の内乱を鎮圧するかという予期せぬ関心を持たれているという記事と、アメリカ国立天文台監督が東洋の島国を魔法の杖でアマゾンに移動させ、アマゾンの開発をさせようと提案する記事を紹介します。

  • 1853年5月7日(ILN):「合衆国の日本遠征」(注1)

Commodore Matthew C. Perry, Commander of the United States Expedition to Japan.
マシュー・C. ペリー提督、合衆国日本遠征の指揮官
From a Daguerreotype by Meade, Brothers, New York
ニューヨーク、ミード・ブラザースによるダゲレオタイプ(銀板写真)から

長い記事なので、本文にはない小見出しをつけて抄訳します。

マカオに集結しているペリー艦隊は中国の反乱軍討伐に乗り出すか

 巨大で強力なアメリカ艦隊が東洋の海に存在することに今現在、予想せぬ関心が持たれている。中国の現皇帝の王権を脅かしている内乱の結果と、皇帝の軍隊を破り、帝国の大部分を破壊している反乱軍を打ち負かすために外国軍隊の援助を皇帝が懇願する可能性があるからだ。

 日本の遠征は何度も出帆しかけたが、キューバ問題などの出来事で中断されてきた。ピアス大統領が遠征を中止する命令を出したという噂は最近否定された。前政権によって企画された艦隊は東シナ海のアメリカ海軍最高司令官、M.C.ペリー提督の指揮下にあり、日本遠征の[艦隊]は以下の軍艦から構成される。戦列艦ヴァーモント号、フリゲート艦マケドニアン号、蒸気フリゲート艦3隻—ミシシッピー号はペリー提督の旗艦(下の銅版画がこの素晴らしい船)、サスケハナ号、ポウハタン号—、第1級の蒸気船アレゲニー号、5隻のスループ型軍艦:サラトガ号・プリマス号・ヴァンダリア号・ヴァンセンヌ号・セント・メアリー号、同行する調査船ポーポイエス号、3隻の物資輸送船で、艦隊を構成する蒸気船の数は15隻である大砲の総数は260、士官・海軍兵士・海兵隊員の総数は4,000人である。

The Steam-Frigate “Mississippi,” United States Navy.(注1)
アメリカ海軍、蒸気フリゲート艦「ミシシッピ号」

アメリカ海軍艦隊の破壊力は世界一

 艦隊はヴァーモント号、マケドニア号、アレゲニー号以外はマカオに集結している。ヴァーモント号は乗組員が乗船できる状態だが、イギリス海軍で脱走が横行しているように、アメリカ海軍も乗組員を集めるのに苦労している。商船が高い給料で乗組員を誘うため、ヴァーモント号の乗組員690人を集められるかわからない状況だ。この問題以外に、合衆国海軍の全階級の男たちの総数が7500と法律で定められている上、総数を拡大するための海軍省の予算要求を議会がまだ通していないので、ヴァーモント号がペリー提督の艦隊から削除されるのは避けられなくなった。アレゲニー号は現在機械工の手中にあるが、修理の遅れは遠征に間に合わないことになるだろう。しかし、これらはペリー提督が考えている日本遠征の障害になることはない。この2隻が減っても、これ以上の強力な艦隊がアメリカの海岸から出たことはないと言われている。

 これらの船には大砲が260しかないが、遠征隊の軍事力は大砲の数で測るものではない。イギリスの船員は皆知っていることだが、アメリカの軍艦は他のどの国の軍艦よりも、そのトン数と大きさに比較して鉄の量が多い。[砲弾の大きさと重さの比較が詳細に記されています] 同じ銃の数、同じトン数の船でも、アメリカの軍艦ほどの破壊力を持って浮かんでいられる船はないとアメリカは断定している。

日本を武力で従わせるのが「文明」だ

 この遠征は日本政府と日本人に対する攻撃が目的ではないと言われ、武力を使うつもりはないと考えられている。しかし喧嘩の理由にはこと欠かない。日本政府は日本の海岸に漂着したアメリカ人の船乗りを野蛮にも逮捕し、カゴに閉じ込めた。ペリー提督は日本政府にこの非道な行為の説明を求めるだろう。日本政府はこの行為の理由をあげることも、謝罪することもないから、日本政府が拒否できなくなる方法を用いる必要があるとアメリカは言う。つまり、この遠征は日本政府を無理やり「文明」(原文強調)化させることである。日本が残虐に扱った人々の国家と交渉することに同意しなければ、人道とは何かを教えてやり、「文明化した帝国の序列に入らせ」(原文強調)なければならない。

 (中略:その他の目的と随行する調査艦隊の目的についての記述)リンゴールド大佐の艦隊はエンジニアと科学者の集団で、この遠征で人類の知に貢献することが期待されているが、日本との攻撃になれば、彼の艦隊はペリー提督の呼びかけに応えられる範囲内にいることになっているとのことである。(後略:ペリー提督の経歴)

  • 1853年5月11日(NYDT):「サンドイッチ諸島の併合と政権の見解」(注2)

1790年にハワイ諸島の原住民の人口は40万に満たなかかった。1830年には15万人になり、1850年の国勢調査ではわずか8万人だった。その前年の出生数を死亡数が2,808人も上回っていた。この死亡率では今世紀末にはハワイ諸島の原住民は絶滅する。原住民が消滅する一方、その空白をアメリカからの移民が埋めている。この諸島の教育・宗教・貿易、政府さえも既にアメリカの統治下にある。

 ハワイ王国とアメリカの関係は、テキサス共和国と合衆国の関係に似ている。(中略)モンロー主義の定義について意見の相違が存在するにしろ、サンドイッチ諸島の領土が他の国に移ることはどうしても阻止するという点では一致している。この移譲は暴力で行われるべきではなく、また、ハワイ政府と国民の希望を無視して行ってはならない。現在の王は外国勢力と困難なことになった場合には、アメリカ政府の保護を求めると述べた。そのような緊急事態の場合、アメリカ政府の義務は明白である。

 サンドイッチ諸島の領有は太平洋における我が国の急速に増大している貿易を守るために必須である。カリフォルニアと中国の間に位置し、アメリカとアジア貿易にとって重要だ。我が国の捕鯨船の便利な集結点を成し、蒸気船の補給にとって必要だ。近い将来、我が国の蒸気船はサンフランシスコから上海と江戸[訳者強調]の間を航海する。[もしハワイが]世界の主要海洋国の領土だったら、アメリカの国益に深刻な損害なしに通過することはできない。

 アメリカのミッショナリーの熱心な努力のおかげで、原住民は異教から改心し、アメリカ人商人の事業によって、文明の快適さと高尚さを知り、アメリカ市民の寛大な助けによって、彼らの宗教・教育・政府は維持されたので、ハワイ原住民が外国勢力の略奪から逃げるために、アメリカ連合の保護を求めたとしても不思議はない。

 以下の記事の提案が166年後の現在につながっているようです。これも非常に長い記事なので、小見出しをつけて抄訳します。

アマゾンに東洋の島国を持ってきて、開拓させよう

  • 1853年5月23日(NYDT):「パシフィック鉄道とアマゾン」(注3)

『ナショナル・インテリジェンサー』より:以下の興味深い手紙が国立天文台の監督であるアメリカ海軍のモーリー大尉から編集部に届いた
国立天文台 1853年5月5日
アマゾン流域に蒸気船と移住者と商業を持って来れば、アマゾンを巨大なプランテーションに変えられる。この膨大な資源がアメリカのすぐそばにある。アマゾン川は現在ブラジル・ボリビア・ペルー・エクアドル・ニューグラナダ・ベネズエラの6カ国を通り、大西洋に注いでいる。これらの国はアマゾンに自由貿易の原則を導入しようとしていて、我々の援助を求めている。ボリビアが最初にアマゾン地域を世界の商業に開き、その他の国々も続いた。(中略)
  アラジンのランプか、強力な魔法使いの杖があれば、インドと東洋の島国全てをちょっと触って、その人々と商業と生産品と富を持ち上げ、海を渡って、アマゾン川の大きな谷にそのまま置いたらどうなるか。そして我が国の商業関係に及ぼす影響はどんなものになるだろうか。
インドが我が国のすぐ近くにあることになる。そして全ての国がインドと貿易をするためにアマゾン川を行ったり来たりすることになる。我々はニューオーリンズ・セントルイス・メンフィス・ルイズヴィル・シンシナティ・ウィーリング・ピッツバーグの波止場で蒸気船が毎時、毎日のように絶え間なくこの新しい国との間を行き来するのを見ることになる。
我々の子どもたちがアマゾン・ボートの行き交うのを数えて、こう言うのを想像できる。「あの船、ロッキー・マウンテンから一杯荷物を積んでるのが行くよ。アンデスの水が流れ落ちるアマゾンの滝の下で貨物を下ろすんだ。東ペルーの川から上ってくる船と合図を交わしてる」。

 この調子でアマゾン開拓後の未来を延々と述べてから、「アマゾン川流域は我が国に世界の熱帯の産物全てを供給してくれる。この国[アマゾン全体を国と表現しているようです]は鉱物と植物の宝庫で、その豊富さと資源は卓絶している」と結論した上で、開拓の方法を述べています。

想像では魔法の杖だったが、実際には斧・蒸気船・鋤とずっと強力なものが必要だ。したがって、良き市民として、良き隣人・良き人間として、我々はアマゾン川に蒸気船・斧・鋤を入れる権利がある。そうすることによって、現在の世界の人口全部を維持できるものを持つこの国[アマゾン]との商業の基礎を作ることができる。

アマゾン火災

 この記事を読み、翻訳している時に、アマゾンの大規模な火災のニュース(注4)、子どもたちが大人たちに気候変動・温暖化問題に対処せよと立ち上がり、世界中で数百万人のデモが行われているニュース、福島第一原発事故の責任を問う東京電力裁判結果、台風15号で千葉県全域が大被害を被っているのに政府も県も対応しないニュースが報道されていました。

 アマゾンの火災に関しては、「地球の肺」と呼ばれ、地球上の酸素の20%を生み出していると言われる貴重な熱帯雨林なのに、山林火災が頻発し、焼失面積の加速が危機的状況になっています。以前は自然に消火していたのに、「大規模な農場や牧場の開発で森林が伐採されて、森の乾燥化が進んでいることが大きな原因」と指摘されています。これらの農場や牧場は日本にも輸出されている大豆・トウモロコシ・牛肉を生産しているので(注5)、日本人も「世界の肺」の消滅と気候変動に貢献していることになります。

 その上、日本政府は1970年代からアマゾンの破壊計画に融資していたそうです。「1974年、日本のJICA(独立行政法人国際協力機構)が作成したものであり、日本の融資によるアマゾン開発が、大カラジャス計画でした。巨大鉄鉱山の開発を中心に、これに伴う鉄道や道路網、ダム開発、アルミ工場建設、林業・農業生産のための入植などを含む巨大なものであり、環境や社会開発の視点を欠いた計画でした」と指摘されています(注6)。1853年のアメリカ国立天文台監督の妄想はインドや日本を国ごとアマゾンに移植して、奴隷のように働かせて大規模な農地・牧場開発をさせようというものでしたが、日本政府はそれを20世紀に実現したようです。

 グリーンピースは肉のファースト・フード企業マクドナルド、バーガー・キング、ケンタッキー・フライド・チキンに対しアマゾン火災について声をあげよという抗議の署名を集めています(注7)。去年末に『ネイチャー』に発表された研究によると、肉食によって世界の森林破壊が進み、水も持続不可能になるので、肉食を「欧米で9割減」を提言しているそうです。牛の排泄物は「メタンを大量に排出する上、放牧地を確保するための大規模な伐採によって二酸化炭素を吸収するはずの森林が破壊されたり、持続不可能なほど大量の水が使用されたりする。例えば500グラム分の牛肉の生産には、7000リットル近い水が必要とされる」と指摘されています(注8)

 この気候変動・温暖化対策を話し合う国連温暖化サミットが2019年9月23日から行われ、小泉進次郎環境相が出席するためにニューヨークに行き、到着後すぐに高級ステーキ店に行ったというニュース(注9)がSNSで話題になっています。世界中の子どもたち・若者が大人に向かって気候変動・地球温暖化対策を行えと声をあげ、「気候変動ストライキ」を行っている最中に、毎日でもステーキが食べたいと放言する日本の環境相の資質が問われます。

気候変動ストライキ

 「気候変動ストライキ」は日本の報道はあまり大きく扱っていませんが、世界中で数百万の子ども・若者が同時デモを行ったことを欧米メディアは大きく扱っています。欧米だけでなく、アジア・アフリカ・南米・太平洋諸島など、本当に大規模なデモが行われた様子がわかりますので、写真を見てください(注10)。また、このデモの主催者サイトに世界地図とデモの実行地が記されているので、規模の大きさがわかります(注11)。オーストラリアの参加者は全国で30万人だったというので、人口2529万人弱(2019年3月現在、(注12))の国でいかに多くの若者が危機感を持っているかがわかります。日本の場合は人口に比べて少なかったようですし、デモを「大衆的示威行動」と訳すだけに、危険な行動としてしか認識されていないからでしょうか、外務省がこのデモについて注意喚起して、まるで暴動扱いです。

9月20日(金)午後0時頃から午後5時頃にかけて,ハンブルク市内中心部で2万人規模のデモが予定されています。ニーダーザクセン州,シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン州,ブレーメン州の各都市でも気候変動等をテーマとしたデモが予定されています。デモに遭遇した場合には,現場の警察官の指示に従い,ご自身やご家族等の安全を確保するようにお願いいたします。(注13)

 「ニューヨーク州では公立校1800校の生徒110万人が、授業を休み抗議に参加することを許可された」(注10)そうですから、大きな違いです。

 この世界規模のデモの発端はスウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリさんが15歳の時、2018年8月に1人で始めたストライキだそうです。彼女は8,9歳の時に学校で教わった温室効果ガスの影響や氷河が溶けていることが頭から離れなくなり、11歳の時に鬱状態になって不登校になったそうです。やがて、気候変動に関心のなかった両親に資料を見せて危機的状況であることを理解させ、2018年8月から3週間学校を休み、スウェーデン国会議事堂の前で、「気候のための学校ストライキ」というプラカードを持って立つ行動を始めました。最初の数週間は完全に無視されたそうです。それが1年後に全世界で「1400万人の学生が授業を休んで、自分たちの、そして地球の未来を守る」デモに発展したので、「世界を変えた少女」と称されています(注14)。23日の国連温暖化サミットでも話すそうですが、9月20日のニューヨークのデモ集会で彼女は次のように言いました。

私たちがこのストライキをするのは、世界のリーダーたちの目を覚まさせるためです。彼らに行動させるためです。私たちは安全な未来を持つ権利があります。私たちは安全な未来を要求します。(中略)もし誰も行動しないなら、私たちが行動します。本当はこうあってはいけないのです。未来のために闘うのは私たちであるべきではない。でも、こうしてデモしています。みんな一緒に連帯すれば、私たちを止めることはできません。これが市民の力です。私たちは困難な問題に立ち上がります。この危機の責任者を捕まえて、世界のリーダーたちに行動させます。私たちにはできます。私たちが脅威だと感じる少数の人たちにとって、もっと悪いニュースがあります。これは始まりだということです。この人たちが好むと好まざるにかかわらず、変化は来ます。(注15)

 この翌日の9月21日には、国連初の試みという気候変動を抑える活動に取り組む世界の若者たちを集めた「国連若者気候サミット」がニューヨーク国連本部で開かれ、グレタ・トゥーンベリさんも参加したと報道されています。グテレス事務総長はグレタさんの「『運動で変化の機運が高まっている』と述べ、各国政府に若者世代の声に応えるよう促した」そうです(注16)。一方、9月22日に小泉環境相が記者会見で語ったことが世界中で顰蹙を買っています。最初に報じたロイターが「日本の新しい環境大臣が『気候変動』との戦いをセクシーにと発言した」と報じた(注17)ことが、瞬く間に世界中のメディアに引用されて広がっています。特に「政治には多くの課題があるので、時にはつまらない。気候変動のような大きな問題に取り組むためには、楽しく、かっこよく、セクシーでさえなければならない」(注18)と言ったことを、オーストラリアのメディアは「気候変動の闘いを日本は『セクシー』にする計画:バカバカしい、セクシーな気候変動の闘い—死と破壊と荒廃の退屈な話は退場、日本は気候変動の闘いを楽しい、かっこいい、セクシーにさえしたいのだから」(注19)という見出しで伝えています。ネット検索したところ、「セクシー」発言を大きく取り上げた英語圏メディアは『フィナンシャル・タイムズ』『インディペンデント』『デイリー・メイル』『シドニー・モーニング・ヘラルド』(注20)等々です。

 ところが、「セクシー」は「いけてる」という意味で使うから問題ない、国連職員から借用した言葉なのにメディアが切り取って批判材料にしているとテレビ・コメンテーターたちが的外れの小泉擁護をしています(注21)。英語の”sexy”の使い方をよく知っている英語圏メディアが、地球規模の深刻な問題を「セクシー」にしようという環境相の公式の発言に驚いたことは明らかです。この記者会見全体を見ると、「セクシー」も「楽しく」(fun)も確かに借用した言葉だと分かりますが、政府が気候変動や脱炭素社会にどんな具体策を持っているのか記者に聞かれると沈黙して、日本政府としては減少する気がないことが露呈しています(注22)。小泉環境相が日本の若者の間に気候変動問題に関心を持たせるために、「楽しく、かっこよく、セクシーな」運動を推進する政策を出し、再生可能エネルギーを推進せずに火力発電と原発に固執して、気候変動による被害の増加に無関心な安倍政権の政策を変えてくれることを期待したいと思います。

 安倍首相とオーストラリアのモリソン首相が国連気候行動サミットで話すことを断られ締め出されたと前述のオーストラリアの記事は報道しています。両国とも火力発電を続けているからです。記者会見の翌日、9月23日に国連「気候行動サミット」で演説したグレタさんは”how dare you”(よくも…言える/できるものだ)という強い非難の言葉を繰り返して、世界のリーダーたちに気候変動にすぐに対応せよと怒りに震えるように訴えましたが(注23)、「楽しくセクシーな」運動にするという日本政府に対する非難とも読めます。グレタさんが23日まで自身のツイッター自己紹介を「アスペルガー症候群の16歳の環境活動家。9月20〜27日の世界気候ストライキに参加します」から、24日に「明るく素晴らしい未来を夢見るとても幸福な若い女の子」(注24)に変えたことが世界中で話題になっています。これはトランプ大統領の皮肉に対する「静かな反撃」と称賛されています(注25)。トランプ大統領が彼女の国連演説について”she seems like a very happy young girl looking forward to a bright and wonderful future. So nice to see!”とツイートしたことに対する彼女の反撃というわけです。この演説の後、右派のテレビ・コメンテーターから攻撃されているそうですが、彼女が環境ストライキを始めてから個人的な攻撃をされ続けていても、攻撃者の意図は気候変動問題から世間の目をそらすため、警告を発する科学を攻撃できないから彼女を攻撃するのだと理解しているそうです(注26)

温室効果ガス推進国として毎年「化石賞」受賞の日本

 9月23日の「気候行動サミット」で演説の機会が与えられたのは温室効果ガス削減に「より野心的な目標を持ち寄った国」で、英独仏、中国、ニュージーランドなどの首脳や閣僚、民間企業トップだそうです(注27)。温室効果ガス排出量の多い石炭火力発電を推進している日本は、毎年「地球温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる『化石賞』」(注28)を受賞しており、2018年末には「石炭火力発電所建設を巡る日本の態度は賞にふさわしいが、国際社会では存在感がない」と評価され、「あきれ果てて相手にされない」国になったそうです(注29)。国内だけでなく、日本企業がアジアでも火力発電を推進しているので、グリーンピースに警告を出されています(注30)

 福島第一原発事故の後、世界各国は再生可能エネルギーにシフトしていますが、日本は再生エネルギー後進国です。その理由は既存の電力大手が阻止していること(注31)、安倍政権が積極的ではなく、原発に固執していることが大きいようです。安倍政権が原発エネルギーに固執し続けていることと、核禁止条約に参加しないことの関係は核兵器を持ちたい、戦争ができる国にしたいという異常な執念との結びつきからと読み取れますが、それを立証する情報があります。現外務省事務次官の秋葉剛男氏が2009年に米議会委員会で日本がアメリカと核を共有しない限り、日本の不安は解消されないと証言していたことを、「憂慮する科学者同盟」の科学者が2010年の報告書で関連文書を公開しています。安倍首相がこの核共有が一つの選択肢だと過去に述べたと稲田朋美防衛大臣が書いていることを2016年10月11日の参議院予算委員会で問われ、お得意のはぐらかし答弁をしたと指摘されています(注32)

東電裁判判決・台風15号の甚大被害に対応しなかった安倍政権と千葉県知事

 気候変動ストライキ・デモが行われている時に、福島第一原発事故の責任を東京電力旧経営陣3人に問う裁判に無罪判決が出ました。原子力事業者は安全対策をする必要がない、過酷事故を起こしても責任はない、国民市民は原子力発電から「安全」を望むべきではないというに等しい判決でした(注33)。この判決と呼応するかのように、台風15号の甚大被害に対して安倍政権と千葉県知事、そして東京電力が適切な対応をしなかったことが安倍政権下の日本を表しているようです。9月8日に気象庁から「記録的な暴風」が首都圏に上陸の恐れ、9日未明には「千葉市付近に上陸し」「関東では過去最強クラス」と警告が出ていたにもかかわらず(注34)、上陸5日目でも千葉県全体で30万3400軒で停電が続き、断水2万7000戸(注35)、2週間後でも停電が2800戸、断水の世帯もまだあるという異常事態です(注36)。東電は原発事故でも「想定外」を主張し、この台風の被害も「想定外」を繰り返していますし、状況把握もせずに甘い見通しを公表して、その後訂正を続けたことと(注37)、無電柱化後進国の日本の問題が露呈したようです。無電柱化が世界でも突出して少ない理由は部品が高額だからとされていますが(注38)、日本の部品が諸外国より高い理由がなぜか解説されていないので、裏の事情があるのだろうと思わされます。

 台風被害について何よりも恐ろしいのは、東電だけでなく、千葉県と政府の対応の遅れです。森田健作知事が職員を現地に調査に送ったのは台風上陸から4日も経ってから、最も被害のひどい鋸南町には11日目に視察(注39)、安倍首相は組閣に夢中、その後もラグビー観戦に夢中の様子をツイッターするだけで(注40)、千葉県民627万人強(注41)の命・生活・財産を守ることには無関心です。今後の災害についても、全国民市民の被害に対して同じ無視・無関心でしょう。それなのに、この台風被害が甚大だと報道されている最中、9月14, 15日の世論調査で、安倍政権支持が10%も上昇したのは驚きです(注42)。安倍政権擁護のワイド・ショーに簡単に騙される国民ということでしょうか。

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1. ”The United States Expedition to Japan”, The Illustrated London News, vol.22, 1853 Jan.-June, May 7, 1853, p.344. Hathi Trust Digital Library.
https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=chi.60765664
2. ”Annexation of Sandwich Islands”, The New York Daily Times, May 11, 1853, p.3.
https://timesmachine.nytimes.com/timesmachine/1853/05/11/issue.html
3. ”Pacific Railroad and the Amazon”, The New York Daily Times, May 23, 1853, p.3.
https://timesmachine.nytimes.com/timesmachine/1853/05/23/issue.html
4. 「アマゾンの熱帯雨林が『記録的ペースで消失』サンパウロは真っ暗」BBC, 2019年8月21日
https://www.bbc.com/japanese/49416822
*「アマゾン森林火災、くすぶる先進国への不信 現地ルポ」『日本経済新聞』2019/8/28
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49033290X20C19A8000000/
5. 宋光祐「『地球の肺』が呼吸困難 アマゾン火災、日本も関わりが」『朝日新聞DIGITAL』2019年8月29日 https://digital.asahi.com/articles/ASM8W4KBFM8WUHBI01G.html
6. 志葉玲「なぜ『地球の酸素20%供給』のアマゾン熱帯林が焼き尽くされているのか—日本もアマゾン破壊に関与」YAHOO!ニュース、2019/8/27
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20190827-00139985/
7. 「環境NGOグリーンピース。ブラジル・アマゾン森林火災問題で、マクドナルなどのファーストフード3チェーンに、ブラジル産牛肉・大豆の使用拒否を求める国際署名開始」RIEF環境金融研究機構、2019-09-05
https://rief-jp.org/ct4/93567
8. 「気候変動対策に肉の消費減が不可欠、『欧米で9割減』提言 研究」AFP, 2018年10月11日
https://www.afpbb.com/articles/-/3192970
9. 「小泉環境相、NYでステーキ店へ」MBS NEWS, 2019-09-22
https://www.mbs.jp/news/zenkokunews/20190922/3784862.shtml
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小泉環境相、NYでステーキ店へ _ MBS 全国のニュース
10. 「『私たちの家が燃えている』温暖化対策求め、地球各地で数百万人が抗議」BBC, 2019年09月21日 https://www.bbc.com/japanese/49773299
*Sinéad baker et at., “Photos show huge climate-change protests around the world, which have spread across continents as millions strike to demand action”, BUSINESS INSIDER, Sept.20, 2019
https://www.businessinsider.com/global-climate-strike-photos-show-protests-around-world-school-children-2019-9
*Ryusei Takahashi “Japanese activists join global climate strike ahead of U.N. summit on global warming”, The Japan Times, Sept. 20, 2019
https://www.japantimes.co.jp/news/2019/09/20/national/japanese-activists-join-global-climate-strike-ahead-u-n-summit-global-warming
11. The Global Climate Strike Is Happening Now.
https://globalclimatestrike.net
12. ”Estimated resident population”, Australian Bureau of Statistics
https://www.abs.gov.au/AUSSTATS/abs@.nsf/mf/3101.0
13. 「大規模デモに関する注意喚起」外務省、2019年09月19日
https://www.anzen.mofa.go.jp/od/ryojiMailDetail.html?keyCd=75200
14. Clementine Pressigny, Nozomi Otaki (tr.),「世界を変えた少女:グレタ・トゥーンベリ」i-D MAGAZINE, 02 Sept. 2019
https://i-d.vice.com/jp/article/pajdyg/greta-thunberg-by-harley-weir-intereview
15. “As it happened: Climate protests sweep the world”, BBC, Sept.21, 2019
https://www.bbc.com/news/live/world-49753710
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17. 「『気候変動問題はセクシーに』小泉大臣が国連で演説」テレ朝、2019/09/23
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19. Katie Hill “Japan’s Plan To Make Climate Change Fight ‘Sexy’: ‘Stupid, sexy climate change. Boring’ stories of death, destruction and devastation are out, as Japan seeks to make the fight against climate change fun, cool and even sexy”, 10 Daily (Australia), September 22, 2019
https://www.cnet.com/news/japans-new-climate-minister-pledges-to-make-fighting-climate-change-sexy/
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https://www.smh.com.au/world/asia/make-climate-fight-sexy-says-japan-s-new-environment-minister-20190923-p52twb.html
*Matthew Green “Climate change fight should be ‘sexy’ and ‘fun’, Japan’s new environment minister says”, Independent, September 24, 2019
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24. 「16歳の環境活動家グレタさん、トランプ大統領の皮肉にプロフィール変更で大人の対応」ITmedia NEWS, 2019年09月25日
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1909/25/news081.html
25. 「グレタ・トゥーンベリさんを皮肉ったトランプ大統領。彼女の静かな『反撃』に称賛集まる—グレタ・トゥーンベリさんが国連で行なった怒りのスピーチとともに、トランプ大統領との静かな攻防に世界中が注目している」『ハフポスト』2019年9月25日
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d8adddde4b0c6d0cef37fd3
26. Karen Zraick “Greta Thunberg, After Pointed U.N. Speech, Faces attacks From the Right”, The New York Times, Sept. 24, 2019
https://www.nytimes.com/2019/09/24/climate/greta-thunberg-un.html
27. 隅俊之、八田浩輔「温暖化、各国施策表明へ 今日気候行動サミット」『毎日新聞』2019年9月23日 https://mainichi.jp/articles/20190923/ddm/007/030/086000c
28. 小坪遊「日本にまた『化石賞』各国環境団体、石炭発電巡り批判」『朝日新聞DIGITAL』2017年11月10日 https://digital.asahi.com/articles/ASKCB2437KCBULBJ001.html
29. 五十嵐和大「COP24にみる周回遅れの日本 温暖化抑制へ軌道修正を」『毎日新聞』2018年12月21日 https://mainichi.jp/articles/20181221/ddm/005/070/010000c
30. 「日本企業がインドネシアで進める石炭火力発電事業の経済的、政治的リスクを警告」グリーンピース・ジャパン、2018/12/06
https://www.greenpeace.org/archive-japan/ja/news/press/2018/pr201812061/
31. 梶原大試「日本は再生可能エネルギー後進国から巻き返せるか—『経済合理性』から世界で普及進む」BUSINESS INSIDER, Apr.04, 2018 https://www.businessinsider.jp/post-164597
32. 「核共有に魅かれる日本が核兵器禁止条約に賛成? —日本の核共有はNPTに違反と米科学者連合専門家」『核情報』2018.5.7 http://kakujoho.net/npt/jpnukeshr.html
33. 「【社説】東電旧経営陣に無罪『人災』の疑問は残る」『東京新聞』2019年9月20日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019092002000193.html
34. 湊彬子「【台風15号】首都圏などで『記録的な暴風』の恐れ。気象庁が警戒呼びかける」HUFFPOST, 2019年9月8日
https://www.huffingtonpost.jp/entry/typhoon-15_jp_5d746e0ae4b07521022da832
*「台風15号 千葉市付近に上陸 関東では過去最強クラス」9日(月)4時45分、ウェザーニュース、2019/09/09 05:12
https://weathernews.jp/s/topics/201909/090055/
35. 「千葉停電、全面復旧に1週間以上か 断水なお2.7万戸」『朝日新聞DIGITAL』2019年9月13日 https://digital.asahi.com/articles/ASM9F3RP7M9FULFA007.html
36. 永田岳彦、白杉有紗「千葉台風2週間 停電・断水『もう限界』」『産経新聞』2019.9.22
https://www.sankei.com/affairs/news/190922/afr1909220011-n1.html
37. 磯山友幸「千葉大停電でも『想定外』を繰り返す東電の甘さ」PRESIDENT Online, 2019/09/20
https://president.jp/articles/-/30038
*寺沢知海ほか「東電『状況把握できず見通し甘く』停電復旧遅れる理由」『朝日新聞DIGITAL』2019年9月13日  https://digital.asahi.com/articles/ASM9D5527M9DUTIL039.html
38. 地域景観ユニット「無電柱化事業の“課題”と今後の“技術開発”について」『寒地土木研究所月報』No.737, 2014年10月  http://scenic.ceri.go.jp/pdf_paper/c26_1.pdf
39. 「千葉停電なお20万戸・・・森田健作知事、対応遅れで大炎上! 東電には『不眠不休でやって』 4日目にやっと『県の職員を出そうと・・・』」ZAKZAK, 2019.9.13
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190913/dom1909130006-n1.html
*「『もっと早く来て欲しかった』台風15号上陸から11日 森田知事、鋸南町視察」『東京新聞』2019年9月21日 
https://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201909/CK2019092102000157.html
40. 松尾貴史「台風15号が千葉県直撃 組閣を優先した『棄民』政権」『毎日新聞』2019年9月22日
https://mainichi.jp/articles/20190922/ddv/010/070/020000c
*「安倍首相が台風被害の千葉に視察行かずラグビーW杯観戦で大はしゃぎ! Twitterでも台風に一切触れずW杯宣伝投稿し炎上」『リテラ』2019.09.21
https://lite-ra.com/2019/09/post-4985.html
41. 「市区町村別人口と世帯(令和元年8月1日現在)」千葉県
https://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/joujuu/geppou/saishin/setai.html
42. 平林由梨「毎日新聞世論調査 内閣支持上昇50% 小泉氏起用奏功か」『毎日新聞』2019年9月16日  https://mainichi.jp/articles/20190916/ddm/001/010/141000c